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Vice Versa バイス・バーザ/ボクとパパの大逆転

アメリカ映画 (1988)

映画の登場人物の2人が何らかの原因で “入れ替わる” 映画といえば、子役が出るものでは、一番に『The Parent Trap(ファミリー・ゲーム)』(1998)を思い浮かべる。これは、撮影当時11歳だった名子役リンジー・ローハンの存在があったことと、入れ替わっても同年の双子という簡易性があった。ドイツ映画『Hilfe, ich bin ein Junge!(助けて、僕 男の子だよ!)』(2002)では、12歳の男の子と女の子が入れ替わる。この男の子と女の子の入れ替わりは、最近の『The Swap(ザ・スイッチ)』(2016)でも見られるが、男の子のJacob Bertrandは15-16歳と大きい。一方、父親と息子の入れ替わりは、『Like Father Like Son(ハモンド家の秘密)』(1987)が代表格だが、ここでも息子のKirk Cameronは16歳。どんな演技でもこなせる。しかし、この映画では10歳のチャーリーことフレッド・サベージと、30歳のマーシャルことジャッジ・ラインホルドが入れ替わる。しかも、マーシャルは30歳なのにシカゴの大手デパートの副社長で、かつ、チャーリーの母とは離婚し、滅多に息子とも会わないという複雑な家庭事情まである。この中で、2人が入れ替わると、入れ替わったチャーリーは、重役会にも主席しなくてはならないし、恋人のサムとも付き合わないといけない。一方のマーシャルは、中学校〔この地区では10歳で中学1年〕に行かないといけないが、事態の主導権を握る。フレッド・サベージの役は、子供のチャーリーを叱咤しつつ役を演じさせる “父マーシャル” の雰囲気を出さないといけない。大人の俳優が子供のような大人を演じるのは簡単だが、10歳の子役が副社長で頭の切れるマーシャルの役を果たすのは大変だ。そうした意味で、この映画は、“入れ替わり” 映画として最年少のフレッドが、バリバリの経営幹部を演じるという極めて難役に挑んだということで、映画史上に残るであろう。映画そのもの出来は、特に、悪役の2人のドタバタが冴えなく、いま一つかもしれないが、ラストまで観客を引っ張って行くだけの力は持っている。なお、その他の “入れ替わり” ものでは、『Freaky Friday(フリーキー・フライデー)』(1976)と、そのリメイク〔リンジー・ローハンの再登場〕の『(フォーチュン・クッキー)』(2003)で、脇役として子役が登場するので、次回 簡単に紹介しよう。

30歳のマーシャルは、早まった学生結婚をしてチャーリーが生まれると、しばらくして離婚、今は、シカゴを代表するデパートの副社長として仕事に没頭している。そして、同じデパートの若き女性重役のサムと付き合っている。チャーリーが提唱して始めた3年で8億円を拠出する創立以来最大の「南シナ海プロモーション戦略」のため、サムと一緒にバンコクに出向いた時、そこで見つけた陶器の蓋付き壷が、電気スタンドにぴったりだと思ったマーシャルは、5000個を注文する。そして、1個をサンプルとして持ち帰る。しかし、その壷は、ラマ僧院から盗み出された純金と頭蓋骨で作られた髑髏の置物とすり替えられてしまう。それは、盗んだ強盗が、アメリカに安全に持ち帰るため、タイ政府の保護下で税関審査なしに素通りできるマーシャルの携行品と無断で交換したためだ。帰国したマーシャルには、髑髏の依頼人、ニューヨークで故買の美術品を扱う女性経営者ブルックマイアーから電話がかかり、航空会社の手違いで荷物が入れ替わったため、月曜に取りに行くと言われる。一方、チャーリーは離婚した母に引き取られ、再婚した弁護士の義父と暮らしている。10歳、中学校1年生で、今はもう、父と会う機会も少なくなっている。しかし、両親がカリブ海に1週間の骨休めに出かけることになり、その間、マーシャルのマンションに預けられることに。しかし、父のマンションに行っても面白いことは何もなく、サムと一緒に連れて行かれたレストランにペットのカエルを持ち込み大騒動に。翌月曜日の朝、父と口論になったチャーリーは、辛い学校生活を並べ立て、「できることなら、入れ替わりたいよ」」と口にする。そして、父は、「そうか、私だってそうだ」と言うが、それは、チャーリーが珍しがって髑髏を手にしていたのを、取り上げようと髑髏に触った瞬間でもあった。その髑髏の魔術で2人は入れ替わる。2人は激しく動揺するが、チャーリーを学校に送って行く近所の虐め上級生の父の車が迎えにくるのが20分後に迫っていた。チャーリーになってしまったマーシャルは、父親の権威を振り回そうとするが、身長188センチのマーシャルになったチャーリーには敵わない。学校に行かされた元マーシャルは、慣れていない学校で “いつもの調子” を出してしまい、屈辱的な思いをする。一方、禁じられたのにデパートに出かけた元チャーリーは、急に変人になったかと思われ、さらに、陶器の蓋付き壷を持参したブルックマイアーには、無意味な返答しか与えられず、激しく罵られる。元チャーリーが勝手に会社に出かけたことを知った元マーシャルは、学校を抜け出してデパートに行き、そこの楽器売り場で狂ったように好きなドラムを演奏している元チャーリーを見て、自分のキャリアもこれで終わったかと落胆するが、僥倖が手助けしてくれ、逆に社長から褒められるのを見てホッとする。元チャーリーをマンションに連れ帰った元マーシャルは、マティーニを手に、今後の方針を徹底する。2日目も2人にいろいろなことが降りかかるが、最大のポイントは、夜、元チャーリーがサムをヘビメタのロックバンドに連れていったこと。ここで、サムは、それまで知らなかった “マーシャル” の魅力に開眼する。マンションに戻った2人は、そこで夜遅くまで起きていた元マーシャルと会う。元マーシャルは、 “チャーリー” として、サムに対し「パパは、あなたのことが好きなんだ」と、愛を告白する。水曜日の夜、週末まで戻って来ないはずの母が突然マンションにやって来て、“チャーリー” を家に連れ帰る。木曜の朝、社長から直々の電話で、「南シナ海プロモーション戦略」を再検討する会議を10時に開くと伝えられた元チャーリーは、朝、学校に送られてきた元マーシャルを “拉致” すると、2人で相談し、盗聴・遠隔指示装置を一式購入し、会議室の元チャーリーを、別室の元マーシャルが遠隔操縦することに。途中まで上手く機能するかに見えた作戦は、途中で、“チャーリー” を追って来たギャングによって元マーシャルが拉致されると、元チャーリーは指令塔を失い危機に瀕する。しかし、父のことが心配な元チャーリーは、“的を得た捨て台詞” を残して会議を出て行く。そこに、元マーシャルからの電話が入り、元チャーリーは髑髏を持ち、高架鉄道の駅で元マーシャルとの “物々交換” に臨む。交換後、ブルックマイアーとギャングは、そのまま電車でシガゴ駅に向かうが、2人がニューヨーク行きの切符を持っているのを見ていた元マーシャルは、警察のオートバイを盗み、元チャーリーと一緒にシカゴ駅に直行。途中でパトカーに追われるが、駅の構内までオートバイで乗り入れて振り払い、発車直前のアムトラックに乗り込む。車内では、コンパートメントに入ったブルックマイアーとギャングが口論を始め、ギャングがブルックマイアーのような楽な商売を望んだことから髑髏の魔術で2人は入れ替わってしまう。2人が大声で悲鳴を上げているのを聞きつけた元マーシャルは、髑髏を取り上げる。その日の夜、マンションを訪れたサムにより、重役会での社長の最終決断を聞いた元チャーリーは、その朗報を父に伝え、体も入れ替わろうと、サムに乗せてもらって自分の家に向かう。その車内で、元チャーリーは、父のためにサムにプロポーズする。自分の部屋に窓から侵入した元チャーリーは、髑髏を挟んで父と向かい合って希望を口にし、髑髏の魔法で体を交換する。元の姿に戻ったマーシャルには、サムの車の中で思いもよらぬ幸せが待っていた。

フレッド・サベージ(Fred Savage)の代表作。子役時代のフレッドの活躍はTVが中心で、その代表は、1988年から1993年にかけて6年に渡って主役を務めた『The Wonder Years(素晴らしき日々)』。その前後の映画やTV映画でも主役・準主役を数多く演じている。そのうち日本で紹介されたものは6本。うち、主役を務めるのは2本。そのうち1本の『Little Monsters(リトル・モンスター)』(1988)は子供向けの駄作なので、この映画がフレッドらしさを堪能できる唯一の作品。この映画の演技で、彼は、SF・ファンタジー・ホラー作品を対象にしたサターン賞の最優秀若手俳優賞を獲得している。映画の撮影は1987年3~5月で、フレッドは1976年7月生まれなので、撮影時は10歳。30歳の父親と入れ替わるという設定なので、10歳でも30歳に見えるような演技が必要とされる。100%成功しているとは言い難いが、オーバーアクションにならないコミカルな演技はなかなか難しく、コメディ子役フレッドならではの見事な出来栄え。

あらすじ

映画の冒頭、母が、「チャーリー、時間よ」と呼び、チャーリーは、階段を降りながら、「パパ、今夜来る?」と訊く。「留守録に入れておいたわ」。「もう一度電話してよ。よく忘れちゃうから」。そして、義父に向かって、「じゃあね、クリフ」と声をかけ、学校に行く。チャーリーは、“父と離婚した母” と一緒に暮らし、“母と再婚した義父” もいる。ここで、場面は開店前のデパートに変わり、そこでは、チャーリーの父マーシャル(副社長)と、女性のサム(重役)が販売計画のことで言葉を交わし、エレベーターに乗る。その中で、「今朝、どこに行ったんだ? 起きたらいなかった」。「早朝のジムだって言ったじゃない」と言うので、2人の関係が分かる。マーシャルは秘書に、「息子のコンサートに行く。5時までにここを出なきゃならん」と指示する。場面は夕方の学校に変わり、「ヘミングウェイ中学タレントショー」で、チャーリーがバンドの一員としてドラムセットを叩いている(1枚目の写真)。観客席は満員で、母の隣の席だけが空席。母は 時々時計を見てはイライラしている。シカゴ市内は、夕方のラッシュで道路は渋滞、父の乗った車はぜんぜん前に進まない〔5時と指示した父も悪いが、渋滞の可能性を示唆しなかった秘書の方がもっと悪い〕。タレントショーは終幕を迎え、参加者全員が舞台でお別れソングを歌い、拍手喝采を浴びる。その頃、父はようやく建物に入り、階段を必死に走って登る。そして、演奏会が終わってざわついている大きな準備室に入って行き、チャーリーの前まで行く。「チャーリー」。「やあ、パパ」。「何て言ったいいか… 信じられないようなことが、いろいろあって」(2枚目の写真)。そう弁解すると、「パパが旅行から戻ったら、泊まりに来ないか?」と誘う。「いいよ」。「ママの休暇中にでも。この埋め合わせはするから。約束する」。
  
  

その後、マーシャル・シーモアとサム・クリスピーは、タイに出張する。目的はデパートで扱う商品の拡大(「南シナ海プロモーション戦略」)。一方、盗まれた貴重な美術品を扱うタイ人が、アメリカで盗難品の古美術を扱っているギャングと会っている。タイ人が見せたのは、チベットの寺院から盗み出された純金と髑髏(どくろ)で作られた品(1枚目の写真)。タイ人は、ラマ僧が、家の霊を変える儀式に使うものだと説明する。ギャングが提示した買い取り額は、僅か5000ドル〔当時の約60万円、現在の約70万円〕。タイ人は、アメリカでは10万ドルで売るくせにと非難するが、ギャングは、違法な美術品の国内持ち込みは非常に困難だと、5000ドルを変えない。タイ人は、仕方なくその額で手放す。大掛かりな市場で買い付けをしていたマーシャルは、僅か1.5ドル〔180円〕で買った青の模様入りの陶器の壷をサムに自慢げに見せ、「残りも全部買い占めた。これに、ランプシェードを付けて75か80ドル〔9000-9600円〕で売ろう」と、嬉しそうに言う。マーシャルが、「明日のフライトに積める?」と係りに訊くと、政府協賛の行事なので、税関は問題ないと答える。それを聞いていたギャングの手下は、この2人に目をつけ、2人がタイ式レストランで夕食を楽しんでいると、「お2人の写真を撮りましょう」と言って近づき、サムのインスタント・カメラでツーショット写真を撮る(2枚目の写真、矢印は出てきたプリント)。映画では見せないが、恐らく、この間に部下が壷と髑髏をすり替えたのであろう。
  
  

デパートの重役会では、サムが、ミラノでデザインしたものをバンコクで安く作る案を紹介していると、マーシャルが遅れて入ってくる。社長は、重役の陣の中には、マーシャルが主導する「南シナ海プロモーション戦略」に慎重な意見があると意見するが、マーシャルは、同じような業界の中で抜きん出ていくためには、この戦略が最適だと熱弁をふるう。そして、今回の旅行で見つけた掘り出し物が、600-700%の利益を生むと自慢し、5000個を注文したと断った上で箱から取り出すと、それは壷ではなく髑髏だった(1枚目の写真)。出席者からは失笑が漏れる。一方、ニューヨークにある故買の美術品を扱う女性経営者が、シカゴのシーモア氏に電話をかける。そして、マーシャルが出ると、「シーモアさん、リリアン・ブルックマイアーです。私たち、バンコクから同じ飛行機だったようで、とんだ手違いから青と白の糖菓壷が手元にありますのよ。そちらには、私のものが届いていません?」と訊く(2枚目の写真)。そして、髑髏があることを確かめると、「私、ちょうど、明日シカゴに参りますので、月曜にお会いできたら」ともちかけ、OKを取る。電話を切ると、女性は、ギャングに、「12月にシカゴ?」とブツクサ〔シカゴの12月は平均最高気温が5℃以下/ただし、映画の撮影は3-5月〕
  
  

学校が終ったチャーリーが、義父のクリフや、近所の子とフットボールで遊んでいる。そこに、マーシャルが車で迎えにくる。車から出て、「パスをくれ〔I'm open〕!」なんて言ったものだから、クリフから強烈なパスが飛び(1枚目の写真、矢印がクリフ)、不得手のマーシャルは、体を折って耐える。そこに、母が出てきて、「チャーリー、荷物を取ってきなさい」と言い、元夫には、「これがカリブのホテルよ。何かあったらかけて。あの子、朝食はクロワッサンじゃなくてナーズ〔キャンディー〕なの。宿題を手伝ってやって。試験があるの。火曜の午後は先生との面談」と、畳みかけるように話す。マーシャルが火曜は用事が入っていると言うと、「キャンセルなさい。1週間、父親やったって死にはしないわ」と、つれない返事。チャーリーはドラムを持って行こうとするので、マーシャルは、「ダメだ。賃貸契約に反する」と中止させる。これらのことから、チャーリーがマーシャルのマンションにあまり行かないことが分かる。次のシーンは、もう、マンションの中。12月なのでツリーが飾ってあり、チャーリーは大喜び(2枚目の写真)。「お前が来るから用意した。手配したのはサムだがな」。チャーリーは、自分の部屋に荷物を置くと、ポケットに入れて大事に運んできたカエルのモーを取り出し(3枚目の写真、矢印)、洗面器の中に水を少し入れ、その中に置いてやる。
  
  
  

その晩、チャーリーは父とサムと一緒にイタリア料理のレストランでディナー。チャーリーが、スパゲティを行儀悪く、つるつると呑み込んでいるので、父から睨まれる。だから、チャーリーが、「なぜ、学校に乗せてってくれないの?」と訊いても、「ジョージ・フェリエラが仕事に行く時、息子を学校に送って行くから、一緒に行け。パパは逆方向だ」と、きっぱり断られる。チャーリーは、「デール〔ジョージの息子/虐め上級生〕を知らないんだろけど、あいつ、くそったれ〔asshole〕なんだ」と不平を言い、今度は言葉遣いが悪いと叱られる。父が、ボーイにグレイ・プポン〔ディジョン産のマスタード〕を頼んでいると、サムが、「その子、くそったれなの?」とチャーリーに訊く。「めちゃ〔Major〕」。父:「学校には送ってやれんが、それ以外なら何でもするぞ。約束だ」。「リヴィエラ〔シカゴのコンサートホール〕でマリスってのは?」。「アガサ・クリスティの映画か?」。「ヘビメタのロックバンドだよ。チケットも2枚買ってある」。「ダメだ。試験があるんだろ」。「音楽が、僕の人生なんだ!」(1枚目の写真)。サムは、「約束したでしょ」と取り成す。「おいおい、今週試験なんだぞ。ヤク中どものロックなんかに連れてくなんて期待しないでくれ」〔「何でもするぞ。約束だ」と言ったのに、もう破っている〕。チャーリーは、持ってきたカエルがいなくなったので、テーブルの下を捜す。サムに注意喚起された父が、テーブルの下に頭を突っ込んで、「何してる?」と訊く。「モーが逃げた」。「モーって誰だ?」。「僕のカエル」。父は、ボーイを呼び「問題が起きた」と伝える。すると、別のテーブルの上にカエルが現われ、悲鳴が聞こえる。その悲鳴で、チャーリーがテーブルの下から顔を出し(2枚目の写真、矢印)、モーを捕まえに行く。モーは、その後も登場するので、映画では示されないが、チャーリーはモーを確保できたらしい。
  
  

翌朝、チャーリーは父から小言を山ほど頂戴する。整然としたマンションの中が がらくた市のようになり、上等の絨毯の上には朝食のグラノーラ〔シリアル〕がこぼれている。カエルのこともくどくどと叱られる。チャーリーが、「いい加減、批判するのやめろよ!」と怒ると、父は、「いいか、私は6時から起きてるし、これから辛い1日が待ってるんだ」と反論する。「僕にだって辛い1日だ」(1枚目の写真)。「お前の行き先は学校だろ。楽しくやって、のらくらしてりゃいい。人生で最高の時だぞ」(2枚目の写真)。「もっと悪くなる?」。「お前も、働くようになれば、痛いほど分かる」。それを聞いたチャーリーは、手近に置いてあった髑髏を手に取る。「大人は、試験なんか受けない。虐められたり、『ちび』とか『ばい菌』って呼ばれずにすむ。できることなら、入れ替わりたいよ」(3枚目の写真)。父は、「そうか、私だってそうだ」と言いながら、チャーリーから髑髏を取り上げようとする。父が髑髏に触れた瞬間、髑髏の口が開き、白い煙が吹き出す。父は慌てて髑髏を捨てるが、絨毯の上に落ちた髑髏の目から眩しい光が放たれる。
  
  
  

強烈な光が収まった後、2人はお互いの姿を見て悲鳴を上げる(1枚目の写真)。右が、マーシャルの体に入ってしまった元チャーリー、左が、チャーリーの体に入ってしまった元マーシャル。元チャーリーの白いシャツが裂けているのは、子供サイズのシャツを着ていて、体がマーシャルになったため。逆に、元マーシャルの方は、大人の服を子供が着ているのでダブダブ。元マーシャルは、自分を見上げて、「私そっくりだ」と言い、元チャーリーは、「僕、パパになったんだ… きっと… パパは僕だ」と言う。元マーシャルは、姿見の前に行き、自分の姿を見つめる。そこに、元チャーリーがやってきて、「何が起きたの? 怖いよ」と言って、元マーシャルの方を見る(2枚目の写真)。元マーシャル:「これには、完全に論理的な説明がつくはずだ」。そこに、電話がかかってきて、デールの父親が20分でチャーリーを迎えに来ることが分かる。元マーシャルは、床に落ちていた髑髏を拾い上げると、「これだ… 覚えてるだろ。お前はこれを手に持ち、言ったろ」と言いかけ、元チャーリーは、「覚えてるよ。『できることなら、入れ替わりたいよ』って言った。誰かさんも賛成してたみたいだよね」と言った後で、「だから、着替えないと。あと20分でパパは学校に行くんだ」と嬉しそうに付け加える。
  
  

「バカ言うな。学校なんか行くもんか」。「僕が、このまま学校に行ったら、ものすごく変だよね。デールと一緒に乗って、ルテル先生に会いなよ。試験もあるよ。オールAだ。すごいや」。「私達は、この部屋からは出ない。忘れるんじゃないぞ、私は まだお前の父親なんだぞ」(1枚目の写真)。元チャーリーは、元マーシャルを軽々と持ち上げると、自分より高くまで掲げ、「忘れちゃいけないよ、今は、僕の方が大きいんだ」と威嚇するように言う(2枚目の写真)。結果的に、2人はマンションから出て行くが、そこで、元マーシャルが、「いかん! 報告書だ! 今日、社長に提出するんだった。マーシー〔秘書〕に電話して、病気だと言うんだ」と、元チャーリーに出社しないよう命令する。
  
  

デールの父の車がマンションの前に着く。「パパが、学校に行ったのは、ずい分昔の話だろ」。「何が言いたい?」。「もう、楽しい場所じゃないよ。気をつけないと」。元マーシャルは、助手席の後ろの後部座席に乗り込む。「やあ、元気か?」とデールの父親に声をかけられ、うっかり、「昔は良かったな、ジョージ」と言ってしまい、慌てて、「フェレラさん」と言い直す。後部座席では、デールが睨みつけ、「アライグマのクソ〔Raccoon turd〕」と言い、元マーシャルが、「失礼、どういう意味?」と訊く(1枚目の写真)〔特に意味はない。単語の意味そのもの〕。車から降りると、同級生が言葉をかけてくる。「うじ虫野郎と一緒じゃ辛いな」。「彼は、教育システムの憂慮すべき欠陥の現れだ」。「要は、脳たりんって言いたいのか? で、パパと一緒はどうだ?」。「何で訊く?」。「一緒は楽しくないって言ってたろ」。「父は、素晴らしい人だ。なのに、誰も、計り知れないプレッシャーのことは理解していない」と言って、相手を呆れさせる(2枚目の写真)。
  
  

元マーシャルには、どこに自分が行くべき教室があるのか分からない。そこで、教師を呼び止め、「済みません。問題があります。どこに行けばいいか教えてもらえませんか?」と訊く。「ヘビメタなんか演奏してるから、脳細胞が記憶喪失になったのか?」。「こっちは完全に単刀直入な質問をしてるんだ。完全に単刀直入な答えを期待するね」。教師は、完全に単刀直入に元マーシャルの耳を引っ張って、教室に連れて行く(1枚目の写真)。試験の時間中、元マーシャルは手を上げて、「電話をかけないと」と言う。「試験の最中でしょ」。「終わった」。生徒達はびっくりするが、教師が席を立たせてくれない。そこで、「新聞ある?」と訊き(2枚目の写真)、今度は、生徒達から笑い声が。教師は怖い顔で睨む。
  
  

一方、元チャーリーは、秘書に病欠しろと言われていたのに、好奇心の方が大きく、タクシーで都心のデパートに到着。服装はバッチリ決めたが、靴はスニーカーのまま。口の悪い重役連中に、「僕の部屋はここかな?」と訊き、スニーカーと併せ、「自制心を失したか」と陰口を叩かれる。その先、幸いにも自分の秘書に声をかけられ、自分の部屋の場所が分かる。部屋に入ると、さっそくカエルのモーをポケットから出してやり(1枚目の写真、矢印)、洗面器の中で休ませる。そして、机に座るとウォール・ストリート・ジャーナルを楽しそうに読むが、見ているのは、中に隠したマンガ(2枚目の写真)。この辺り、学校のシーンと対になっていて面白い。
  
  

試験が終わると、元マーシャルはすぐに廊下にある公衆電話からマンションに電話をかける。しかし、誰も出ず、留守録になったことで、元チャーリーが勝手に出かけたことが分かる。そこで、2本目を連続してかけようとすると、待っていた上級生が、「おい、電話を使わせろ」と強い調子で声をかける。しかし、元マーシャルにとって、そんな要求は全く考慮の対象外だ。「秘書に電話しないと。おわかりかな?」と言い、そのままコインを入れてかける。秘書が出ると、「マーシーか? よかった!」と、如何にも上司といった感じで話す(1枚目の写真)。「どなたです?」。「僕だよ、チャーリー」。上級生は呆れて離れていく。「まあ、チャーリー。あなたのパパから、お話はよく聞いてるわ」。「そりゃそりゃ。で、今日、パパは来た?」。「もちろん」。「信じられない。何てことしたんだ。つないで」。「ランチで、出られたところよ」。「今日、どこか変だったら、時差ボケのせいだから。アポをとったり、社長に近づかせないように」。それだけ一方的にしゃべって、ガチャリと電話を切る。秘書は、話し方がボスにそっくりなので驚く。学校のランチ・タイム。セルフサービスの列に並んだ元マーシャルは、「グレイ・プポンは、ありませんよね?」と担当のおばさんに訊き、「何?」と不審な顔をされ、その後、トレイを持って歩いていると、意地悪上級生のグループがわざとぶつかり、トレイの中味が床に散乱する(2枚目の写真)。
  
  

元チャーリーがランチから戻ってくると、来客が待っている。金曜日に電話をかけてきたニューヨークのブルックマイアーだ。しかし、マーシャルは覚えていても、チャーリーは知らない。元チャーリーが部屋に入ると、中で待っていたブルックマイアーは、「私は、航空会社の社長宛に厳しい抗議文を出したわ。あなたも、そうなさったら」と にこやかに言うと、マーシャルがタイで買い付けた壷を手渡す(1枚目の写真)。「それ、お店で 何倍もの値段で売るのよね」と言って、また笑う。お互い、イスに座ると、ブルックマイアーは、「それで、私の骨董品の方は?」と訊く。「ごめんなさい。何の話をされてるんです?」。「シーモアさん、金曜日に電話でお話しした時、ちゃんとお分かりになったはずでしょ?」。「金曜から、いろんなことがいっぱい起きたんで…」。「そうなの?」。「そうです」。「そう… きっと、金曜に、あの価値が分かったのね。そんでもって、金を稼いでやろうと思ったんでしょ? それがあんたの魂胆なのね?」。「パパに話してよ」。「ニューヨークから、無駄足踏むために飛行機で来たと思ってるの? あんたも親爺さんも、よく考えた方がいいわよ。言っとくけどね、あたしゃ男なんか屁(へ)とも思わない強い女〔ball-breaker〕なんだよ」(2枚目の写真)。言葉の意味を知らない元チャーリーは、「わぉ、タマ潰しか」と驚く。
  
  

元マーシャルは、事務室に行くと、「電話をかけないと」と頼む。「生徒は、公衆電話を使いなさい」。「長い列が出来てて、これ緊急なんだ」と言うと、許可を得ずに、電話を自分の方に向けると、すぐにボタンをプッシュし、「やあ、シーモアだ、顧客番号は4126。リムジンをヘミングウェイ中学に回せ。大至急だ〔ASAP〕」(1枚目の写真)と話し、バシャりと受話器を置く。それを横で見ていた生徒達は、あまりのカッコ良さに拍手喝采。デパートでは、元チャーリーが部屋からこっそり出ようとして秘書に見つかる。秘書は、あまりに上司の様子が変なので、「家に帰って、薬でも飲まれたら」と言い、元チャーリーは渡りに船で、そのまま帰る。一方、のろのろ走るリムジンにイライラした元マーシャルは、「葬式の車じゃないんだ。加速しろよ」と急がせる。その頃、元チャーリーは店内をエスカレーターで降りていると、エレキギターの音が聞こえてきたので、思わず引き寄せられる。そこは楽器売り場で、若い男性が弾いていたのは長方形のボディをしたエレキギター。売り場の店員が7000ドル〔当時の約85万円、現在の約100万円〕と説明すると、「ダットサンより高い」と、元チャーリーが言う〔当時の日産はそんなに安いイメージだったのだろうか?〕。元チャーリーは、その若い男性に、「僕はドラム」と言ってしまい、彼に誘われ、売り場にあったドラムセットを演奏し始める。副社長の意外な一面に驚いた店員は、エレクトーンを弾き始め、その賑やかな音に客が集まってくる。元マーシャルはデパートの前まで来ると、リムジンを待たせておいてエレベーターに乗る。そこで偶然一緒に乗り合わせたのが、マーシャルを嫌っている3人組の重役。「マーシャルの態度が変なのは何故か知ってるぞ」。「明らかだ。あいつ、南シナ海プロモーション戦略で孤立無援だからな〔out on a limb〕」。「社長に媚ってるだけさ」など、中傷が交わされ(2枚目の写真)、元マーシャルは3人に対し怒り心頭。
  
  

3人が重役階で降りると、ちょうど社長がやってきて、「4階を見たか?」と訊く。そして、「マーシャルが楽器売り場でドラムを叩いている」と教える。ここで、楽器売り場での演奏風景が映る(1枚目の写真、矢印が若い男)。社長の一行は、エスカレーターで音楽売り場を見ながら降りてくる(2枚目の写真、赤の矢印が社長、黄色の矢印は後から付いてきた元マーシャル)。社長は、楽器売り場に乗り込むと、両端のシンバルを両手で押さえ、「何をしとる!? ここは、ヴァイガー&エイヴァリー〔デパート名〕で、ナイトクラブじゃない!」とマーシャルに怒鳴る。それが社長だとは知らない元チャーリーは、「落ち着いて〔Chill out〕… 彼は、お客ですよ」と反論。社長は、「君は副社長で、販売員じゃないんだぞ」と諫める。その時、如何にも金持ちの女性らしき客が、「クリスマス・プレゼント、決めたの?」とギターの男に訊く。女性を見た社長は、「シルヴィア!」と驚いたように言う。「ストラットフォード! 昨日のディナーの時、チャールズと話してたのよ、最近あなたに会ってないって」。社長は、若い男がシルヴィアの息子だと知ると、“マーシャル” がそれを承知で弾いていたものと勘違いし、元チャーリーを褒める。「よくやった、マーシャル。わしにも、あれが息子だとは分からんかった。きっと、高いプレゼントを買うぞ」(3枚目の写真)。褒められた元チャーリーだが、父の姿を見つけると、勝手に抜け出してきたのがバレたと思い、一気に落ち込む。
  
  
  

一緒にマンションに戻った2人。元マーシャルは、髑髏を手に持つと、「元に戻して下さい」とお願いする。しかし、髑髏から離れてマンガを見ている元チャーリーは、あまり関心がないように見える。だから、髑髏の魔法は起動しない。元チャーリーは、「パパ、これってヘビーだね。このままになっちゃったら?」と言う。「サイテーだ。もう一度 思春期をやり直すなんて。お前こそ どうなんだ? 6フィート2インチ〔188センチ〕の身長に11歳〔11歳で中学なので、5-3-4制〕の知能だ」。「これって 『タマ潰し』が絡んでるんじゃかな?」。「何だと?」。「パパの壷を返しに来た女の人だよ。パパが何か持ってるって」。「金曜に電話してきた女性だ。そうだった。これは彼女のものだ」(2枚目の写真)。「すごく怒ってて、パパのタマを潰すんだって」。「そんな意味じゃない。明日は仕事に戻れ。彼女が唯一の繋がりだ」。そこに、電話がかかってくる。取ったのはもちろん元マーシャル。かけてきたのはチャーリーの母。チャーリーの声は元マーシャルしか出せないので、仕方なく相手を続ける。そして、電話が終わると、「彼女は、この週末に戻ってくる。これが解決できないと、また一緒に暮らすハメになる。夫としてやっていけなくなった女性の、息子になるんだ。フロイト的悪夢だ」と不安をぶつける(3枚目の写真)。
  
  
  

次の日の朝、元チャーリーの伸びたヒゲは、元マーシャルがきれいに剃り落とす(1枚目の写真)。ネクタイもきちんと結んでやる。一方、元マーシャルは、デールなんかと顔を合わせたくないので、新聞に読みふける(2枚目の写真)。出勤した元チャーリーは、欠陥商品のクリスマス・トナカイのおもちゃ(話しかけた短い言葉を録音し、そのまま再生する)の処理を押し付けられるが、元気一杯なので気にしない。
  
  

一方、学校に着いた元マーシャルは、意地悪上級生の3人組に、作ってきた課題を取り上げられて困っている同じクラスの女の子を助けてやろうと、「すごいハンディだな。小さな子に、3人がかりでハラスメントか」と文句をつける(1枚目の写真)。「うるせえ〔Go screw yourself〕、まぬけ〔ass-wipe〕」。「このお嬢さんに課題を返してあげるんだ。そしたら、このことは幕引きにしよう」。その奇妙な言い方に、デールが、「返そうぜ」と課題を女の子に渡すが、そのすぐ後で、元マーシャルを ど突いて廊下に転倒させる。その後の授業で、教師がレポートを回収している時、元マーシャルの1つ後ろに座った先ほどの女の子が、折った紙を渡す(2枚目の写真、矢印)。そこには、ハートの印と、「あなたのこと好きになったみたい」と書いてあった。それを見た元マーシャルは、子供の恋愛ゴッコを(声を出さずに)笑うと、レポートの下に隠す。ところが、教師はレポートを回収する時、その紙も一緒に持っていってしまった〔メモだけ床に落ち、それを拾って その場で中を読んだので、教師はチャーリーが自分に恋をしていると思ってしまう〕
  
  

元チャーリーがオモチャ売り場に行き、ビデオゲームで遊んでいると、その前に、男が立ち塞がる。バンコクで髑髏を買い付けたギャングだ。「話がある」。「待って、自己ベストを破るんだ」。男は、TVの画面を体で塞ぐ。「何だよ!」。男は拳銃を見せ、「これが分かるか?」と訊く(1枚目の写真、矢印は銃)。「僕は、販売員じゃない、副社長だ」。そこに、ダメ重役の3人組がやってくる。そして、“マーシャル” が、クリスマス・トナカイのおもちゃを欠陥品としてリコールの対象にしたことに文句をつける。「トナカイで遊んでたら20分で壊れた」。「だから?」。「だから、そんなのあんまりじゃないか。子供が家に持って帰ったら、すぐ壊れるんだぞ」と、元チャーリーは、消費者感覚の欠如した重役に反論する(2枚目の写真)。「我々は、そいつを10万個も売った。今になって全部回収させる気か?」。「しろよ!」。お陰で、ギャングが 元チャーリーと話をつける機会がなくなった。
  
  

元チャーリーは、午後になると、教師との面談のため学校に向かう。そして、廊下で 意地悪3人組を見つける。これまでの復讐をする絶好の機会なので、3人組がトイレに入ったのを見定めると、元チャーリーは、「動くな!」と叫んで、ドアを蹴って中に入る。「高校パトロールだ」。そして、洗面器に捨てられていたタバコを取り上げ、今まで吸っていたことを確かめると、「やってくれたな〔Nice try, kid〕」と言い、3人を壁に向かって一列に立たせる。「タバコを吸ってただけじゃないか」。「誰が話していいと言った、この不良〔punk〕」。そして、3人に向かい、「巷の噂じゃ〔word on the street〕、お前らロクでなし〔barf bags〕が、7年生のガキを虐めてるそうだな。目をつけられたくなかったら、迷惑行為はやめるんだな〔get off their case〕!」と喝を入れる(1枚目の写真)。最後に、個室を開けて便器を指し、「30分で戻る。全部ぴかぴかにしておかないと まずいことになるぞ」と脅す。ドアを開けて外に出ていった元チャーリーは、廊下に出ると、ガッツポーズ(2枚目の写真)。終業のベルが鳴り 生徒達がいなくなると、元チャーリーは担任に会いに行く。担任は、チャーリーのことを、不可解〔enigma〕、得体が知れない〔puzzle〕、可能性を遥かに下回る〔far below his potential〕、注意散漫〔easily distracted〕、夢想家〔dreamer〕などいろいろな表現で批判するが、ひとつ 素晴らしいこととして、チャーリーが朝の授業で渡してくれたと思い込んだ紙〔「あなたのこと好きになったみたい」と書いたメモ〕を嬉しそうに見せ(3枚目の写真、矢印)、「あの子、私に首っ丈みたい〔has a crush on〕なんですよ」と言う。それを聞いた元チャーリーは、「ありえない〔No way〕!」と全面否定。
  
  
  

変身して2日目の夜は、元マーシャルも落ち着き、元チャーリーに作らせたマティーニを飲みながら、「11歳がこんなに大変だったとは思わなかった。1964年だ。リトル・リーグで2塁を守り、ラジオでビートルズを聴いてた…」と、回顧調に話すようになる。その中で分かることは、マーシャルと 「チャーリーの母」 は学生結婚だったということ。それが離婚の原因かもしれない。そこで、ドアベルが鳴る。元チャーリーが見に行くと、それはベビーシッターだった。それを見た元マーシャルは、今夜がサムとのデートだったことを思い出す。元チャーリーが、代わりにデートに出かける。マンションの前にはサムが車で迎えに来ていた。サムは、毎回同じことの繰り返しで、「2人の関係」が前に進まないことに違和感と危機感を抱いていて、今夜こそ、それを話し合いたいと思っていた。そこで、いつもの店に食事に行くというパターンはやめたいとはっきり言う。元チャーリーは、コンサートに誘う。それは、父と一緒に行こうと思って切符まで用意していた「リヴィエラのマリス」だった。サムは、マーシャルがヘビメタのロックバンドに行くとは予想していなかったので、30歳のマーシャルが高校生のように熱狂するのを見て、その意外性が気に入る(1枚目の写真)。そして、元チャーリーが必死になってマリスのサインをもらいに行ったことを、①チャーリーへの罪滅ぼしで、②優しい行為、だと感心する(2枚目の写真)〔元チャーリーは、そんな話より、もらったサインに興奮〕。「チャーリーが身近にいると、あなたにすごくプラスの影響を与えるのね。今夜のあなたを見ていて、穏やかな気持ちになれたわ。こんな人となら、一緒になりたいって思った」。サムが、こんな大事なことを話しているのに、元チャーリーは子供なので、サムの隣で寝てしまう。
  
  

マンションに戻ってきた2人。元マーシャルがドアの陰から見ていると(1枚目の写真)、半分眠っている元チャーリーに、サムが熱烈にキスする(2枚目の写真)。
  
  

そして、そのままサムが “マーシャル” をベッドに連れて行こうとしたので、元マーシャルは、それを阻止しようと、「気分が悪い」と言って姿を見せる。長々とキスされた後、父の姿を見た元チャーリーは目を丸くする(1枚目の写真、矢印はサムの口紅)。サムは、「もう眠ったのかと思ってた」と言って、元マーシャルに寄って行く。「吐き気がして眠れない」。「熱はないわね」。サムは、“マーシャル” に、「お水を持ってきてあげて」と言い、“チャーリー” をベッドに連れて行き、「パパからあなたに」と言いながら、マリスのサインを渡す。「これに行ったの?」。「知ってる? これって、今までで一番楽しいデートだった」。「じゃあ、いつもは楽しくないの?」。「楽しいわ。ただ、あなたのパパは働き過ぎで、時々、心ここにあらずなの」。「それでも、彼のこと好き?」(2枚目の写真)。「そうじゃなければ、ここにいないわ」。元マーシャルは、“チャーリー” の姿を借りて、自分の心情を告白する。「パパは、あなたのことが好きなんだ」(3枚目の写真)「口下手だけど、あなたを愛してる」。「そう思う?」。「知ってるんだ」。「あなたって特別な子ね、チャーリー」。元チャーリーが水を持ってくると、サムは 「帰るわ」と言い出す。元マーシャルは、サムには、「天気予報は雪だって言ってる。運転が危険になる」と早く帰ることに賛成し、“父” には、「パパも早く寝ないと。明日は大変な日になる」とサジェストする。サムは、“マーシャル”  の健康を気遣う “チャーリー” の額にキス・マークを付けると、“マーシャル” には、「明日、話しましょ」と言い、さらに、「チャーリーって素敵ね」と付け加えてから頬にキス・マークを付ける。そして、「お休み、大好きなお二人さん」と言って、出て行く。
  
  
  

翌朝、2人がマンションからタクシーに乗って出て行くと、その直後に、ブルックマイアーとギャングが中に入って来て、シーモア氏に呼ばれた室内装飾家だと騙(かた)り、部屋のサイズを測りに来たと言って中に入る。目的は髑髏を確保すること。しかし、髑髏はどこになかった。一方、タクシーで2人が向かった先は、フィールド自然博物館のクロシュナー博士。ネットのなかった時代、マーシャルがどうやって短時間でこの情報を得たのかは明らかにされない。2人が髑髏を博士に見せると、博士は、「ラマ僧にとって、髑髏は、身体の無常性のシンボルです。絶えざる輪廻転生の旅において、魂が宿る場所の一つと思われています」と、訳の分からない説明をする(1枚目の写真)。博士が、「預かってもいいですか?」と訊くと、元チャーリーが、「まさか! ダメだ。二度と見れなくなる」と言って、髑髏を取り上げようとする。すると、元マーシャルが、「座ってろ!」と強く命じて、やめさせる。それを見た博士は、親子が逆転したような態度に目をパチクリさせる。言い過ぎたと悟った元マーシャルは、照れ笑いで誤魔化す(2枚目の写真)。博士は、「是非ともこれを見せたい人が。中国のチベット侵攻の前、ラマ僧だった人です」と、預かる理由を説明する。元チャーリー:「どこにいるの?」。元マーシャル:「会えますか?」。博士は、元マーシャルの方に答える。「アレンジしてみよう。預かってもいいですね?」。
  
  

その日の夜、元マーシャルは再びマティーニを手に持っている。元チャーリーに、「よく飲むね」と言われた父は、「ストレスのせいだ。この3日間はひどいからな」と答える(1枚目の写真)〔後で、2人は、博物館に行った後、すぐマンションに戻り、この日は病欠したことが分かる。なのに、なぜストレスが?〕。さらに、元チャーリーが、ラマ僧に期待すると、元マーシャルは、元ラマ僧なんかには全然期待できないと反論する。そこに、ドアベルが鳴る。元チャーリーが開けると、何と母がいて、「何があったの?」と訊く。「別に」。「学校に電話したら、チャーリーは病気だって」。「土曜まで帰って来ないんじゃなかったの?」。「蚊も一つの理由だけど、ハリケーン・クレアが近づいて来たから、『クリフ、家に帰りましょ』って言ったの」。そこに、元マーシャルがマティーニを持ったまま現われ、元妻を見て、「くそ! ここで何してるんだ?!」と非難するように訊く(2枚目の写真)。「それが母親を出迎える言葉なの?!」。そして、すぐマティーニに気付く。そして、「マーシャル、この子 飲んでるわ!」と叫ぶと、マティーニを取り上げる(3枚目の写真)。“チャーリー” は、すぐに自宅に連れて行かれる。
  
  
  

翌朝、元チャーリーが何とかヒゲを剃ろうとしていると、そこに社長から電話がかかってくる。音声は、留守録から流れてくる。「マーシャル、『南シナ海プロモーション戦略』を緊急に解決せねばならん。病気だろうが構わん。会議は10時だ」(1枚目の写真)。一方、ブルックマイアーとギャングは、学校の前でチャーリーが来るのを待ち伏せしている。そこに、母に連れられた元マーシャルがやってくる。元マーシャルが車から降り、道を渡って学校の正門に向かおうとすると、ブルックマイアー達の車の目の前で1台のリムジンが停まり、後部ドアが開くと、元チャーリーが手を差し出す。元マーシャルはリムジンに引っ張り込まれ、そのまま高速で立ち去る。リムジンの中で、元マーシャルは、「リムジンで何してる?」と訊く。「社長が怒ってる。重要な会議を招集した」。「社長が重要会議を招集? もう終わりだ」。「終わりじゃないよ、パパ」。元チャーリーは、デパートの売り場に連れて行く。そこで購入したのは、ペン型の小型マイクロフォン(3枚目の写真、矢印)、マイクロ無線送信機、眼鏡型の受信装置と、それに接続する超小型のイヤホン。これで、会議中の会話をマイクロフォンが拾い、それを聞いた元マーシャルがマイクロ無線送信機で指示すれば、会議室の元チャーリーの耳に入れたイヤホンで、その指示を聞くことができる。ただし、買い物の様子を、ブルックマイアーとギャングが背後で窺っている。
  
  
  

サムが、副社長室まで元チャーリーを迎えにくる。そして、一緒に歩きながら、「反対派が、社長を阻止し、企画を葬らせようと画策してるわ。事態を救えるのは〔turn this thing around〕、あなたしかいない」とハッパをかける。一方、元マーシャルは関係者以外立入禁止の倉庫に入り、資料を持ち、頭にマイクロ無線送信機を付け、いつでも対応できるよう用意をしている。眼鏡をかけた元チャーリーが会議室に入った時、他の重役は全員席についている。元チャーリーは席につくと、小型マイクロフォンを社長の方に向けてテーブルの上に置く。さっそく社長が、「この企画に君が深く関与していることは知っている。だが、君は、会社に総額640万ドルの出資を求めている」と口火を切る。元マーシャル:「はい、でも、3年間で です」(1枚目の写真)。元チャーリー:「3年間で です」(2枚目の写真、矢印は眼鏡)。元マーシャル:「ホンコンの金利も好都合です」。元チャーリー:「キング・コングの金利も好都合です」。それを聞いた人が唖然とする。元マーシャルは、大声で「ホンコン!」と怒鳴る。元チャーリー:「え… ホンコンです」。社長:「そうかもしれん。だが、我々がこれまで単一の戦略に出資した最高額は幾らだ?」。元マーシャル(元チャーリーも同じ):「120万ドル。『イギリスの逸品週間』で、黒字でした。今回、我々が野心的に取り組めば、より大きな利潤が望めます。何と言っても、これは 遥かに創造的な戦略だからです。繊維から陶磁器、スポーツウェアから旅行に敷物まで」。3人組の1人が、「その大きさが、心配なんです」と言い、もう1人が、「もし、顧客が、オリエント趣味がエキゾチックすぎると思ったら、倉庫は着物と糖菓壷で溢れます」と批判する。すると、3人目が、「それはない。倉庫は、リコールされたトナカイで一杯になってるだろう」と余分なことを言う。このことは、社長だけでなく、元マーシャルも知らなかったので、「私に黙ってたな!」と元チャーリーに文句を言う。元チャーリー:「時間がなかったんだ」。しかし、この発言は、他の出席者にも聞こえたので、社長は、「時間って、何の?」と訊く。元チャーリーは、「お話しする時間です」と、取り繕う。「何を話すんだ?」。1人目の3人組:「対話型のクリスマス・トナカイです。その一部に欠陥があったので、マーシャルが10万個をリコールしました」。社長:「気でも狂ったか?」。元チャーリー:「子供たちが、ダマされたんですよ。リコールすべきでしょ」。
  
  

この時、関係者以外立入禁止の倉庫に侵入したギャングが、元マーシャルに後ろから襲いかかり、「騒ぐな」と脅す(1枚目の写真)。元マーシャルは、そのまま連れていかれ、元チャーリーは、父に何が起きたか心配しつつ、1人で処理するしか道がなくなる。社長は、「この野心的な『シナ海戦略』は、もう少し衝動的でない人間に任せた方が安心な気がするんだが」と言い出す。元チャーリーは、眼鏡を外して立ち上がると、「あなたが、どう思っていらっしゃるかは知りません。私が知っているのは、あなたが見ておられる男は、この仕事に真剣に取り組んでいるということです。彼は 必死に働いています。週末も、夜も。息子や大切な人に会うことも間々ならないほど。もし、その男の企画が巧くいかなかったら、首にされるのですか? そんなの最悪だ〔that sucks〕! その男を、くそったれ〔yin-yang〕のように扱われるんなら… もし、くそったれがお好みなら… 今の3人の中から選んだらどうです」(2枚目の写真)。それだけ言うと、元チャーリーは、父のことが心配なので 会議室を出て行く。しかし、父を捜し回るが、見つかったのは自分のバックパックだけ。誰かに連れ去られたことは確かだ。
  
  

元マーシャルは、ブルックマイアーとギャングによって、モーテルの1室に連れて行かれ、そこから元チャーリーに電話させられる。「いいか、逆上したり、パニックになるんじゃないぞ。実は、誘拐された」。「誘拐されたって、どういうこと?! どこにいるの? 誰がやったの?」。「やめろ。最初に言われたことを忘れたのか?」(1枚目の写真)「今から電話を代わる。話をよく聞き、すべてメモしろ」。元チャーリーは博物館に飛んでいき、博士に、「髑髏が要るよ!」と叫ぶように言う。「ここにはないよ」。「ここにないって?」。「誰かに見せたいと言ったでしょ」。「ねえ、分からないだろうけど、一大事なんだ」。「ご心配なく。住所があります」。元チャーリーは、その住所までタクシーで行き、ビルに入ると、フロアの中央に 巨大なカヤが吊ってある(2枚目の写真)。非常に可笑しいのは、そのラマ僧は、元チャーリーを横に座らせると、いきなり、如何にも日本語の発音で「南無妙法蓮華経」と唱え出すところ。
  
  

一方、元マーシャルは、ギャングに、「いいか、そんなに金が欲しくてたまらないのなら、何とかする。少しなら、貯金や債券や証券がある」と話しかける。ギャングは、「豚の貯金箱か?」とバカにする。「頼むよ、子供扱いはやめてくれ。髑髏が私を子供にした。あれには魔力があるんだ。私は見かけと違い、私の父も父じゃない。私の父は 実は私で、私は 彼の父親なのだ」。この紛らわしい説明では、ギャングに通じない。そこで、元マーシャルは別の手を思いつく。「じゃあ、あんたがバンコクのオリエンタル・パレスにいたって、何で私が知ってる? あんた、私とガールフレンドをポラロイドで撮ったろ。襟に醤油のシミのついた安手のリンネルのスーツを着てた」(1枚目の写真)。これで、ギャングには、ようやく何か大変なことが起きていると認識する。その頃、髑髏の入った袋を持った元チャーリーは、全力で “鳴っている公衆電話ボックス” に走り込むと、受話器を取る。そして、別の電話ボックスから電話をかけたブルックマイアーに、「僕だよ! 持って来た」と言う。ブルックマイアーは、元チャーリーに、シカゴ市内を走る高架鉄道の駅のプラットホームに行くよう指示する。一方、その駅に向かう鉄道の車両には、ブルックマイアー、ギャング、元マーシャルの3人が乗っている。車両の中で、ギャングはブルックマイアーに、「ガキから すごく奇妙な話を聞いた。あんたも是非知っておくべきだ」と話しかけるが(2枚目の写真)、ブルックマイアーは、もうすぐ駅が近づいているので、聞く耳を持たない。ギャングは、それでも、「ガキは、父親だそうだ」と言うが、このスタイルは、以前、元マーシャルがギャングに言って、ぜんぜん理解されなかったやり方なので、当然、ブルックマイアーにも全く通じない。
  
  

3人の乗った電車が、元チャーリーが待つプラットホームに入ってくる。電車が停まると、ギャングがプラットホームに降りて元チャーリーの所まで全速で走る。そして、髑髏を確認して袋を奪うと、ドアから車両に飛び込み、代わりにブルックマイアーが元マーシャルをプラットホームに押し出す。ドアはすぐに閉まり、電車は出て行く。元マーシャルは、喜んで自分を抱いている元チャーリーに、「私を下ろせ! 奴ら、シカゴ駅に行く気だ。私達も行くぞ!」と言う。そして、一緒にプラットホームを走りながら、「奴らの切符を見たんだ。15時発、ニューヨーク行き。12番線だ」と教える(1枚目の写真)。元マーシャルは先に立って階段を駆け下りる。そして、警察のオートバイが停まっていて 駐車違反の処理をしているのを見ると、警官に、「プラットホームでお婆さんが強盗に遭ってる」と嘘を付く。警官はすぐに階段を駆け上がっていき、元マーシャルはオートバイを運転し、後ろの荷台に元チャーリーを乗せ、シカゴ駅に向かう。電車の中では、ギャングが、髑髏を満足そうに見ているブルックマイアーに、「ガキは言ってた、そいつには魔力があるって」と言うが、本気にしてもらえない。元マーシャルが運転する警察のオートバイは、途中でパトカーに見つかり、追跡が始まる(2枚目の写真)。駅に着いた頃には、後を追うパトカーは3台に増えていた。しかし、オートバイは駅の構内にそのまま突っ込んで行く(3枚目の写真、矢印はオートバイ)。これでは、パトカーは追ってこれない。元マーシャルは、ニューヨーク行きのアムトラック〔全米鉄道旅客公社〕の先端近くでオートバイを停め(4枚目の写真)、発車直前の列車に乗り込む。
  
  
  
  

列車が動き始めると、2人は4列シートの客車を通り、次に、コンパートメントの車両に行くと、ドアを開けて中を確認していく。一方、コンパートメントの1つでは、ブルックマイアーとギャングが揉めていた。それは、ギャングが “捕まるリスクは自分の方が高い” と急に心配し始めたから。ブルックマイアーは、ギャングを宥めようと、「神秘的なアジアを旅行するのがそんなに大変だった? どうせ女の子と遊んでたんでしょう」と敢えて逆襲し、さらに、「あんたも、冬のニューヨーク34丁目で商いをしてみたら?」と挑発したことで、ギャングは、致命的な言葉を発してしまう。「ニューヨーク? そっちがいい!」。その時、2人の手は髑髏の上に乗っていた。これだけの言葉から、ブルックマイアーがギャングと入れ替わりたいと願ったとは思えないのだが、髑髏の魔力は動き出す(1枚目の写真、辺りが眩しい光で満たされる)。そして、光が消えると、2人は入れ替わる。そして、恐怖のあまり叫び始める(2枚目の写真、1枚目の写真と対比すると、2人が入れ替わったことが良く分かる)。その叫び声を聞いた元マーシャルと元チャーリーがコンパートメントに駆けつける。元マーシャルは、ギャングを見ると、「警告したのに」と言って髑髏を奪うと、さっさとコンパートメントから出て行く〔本当は、元ギャング(今のブルックマイアー)を見て言うべき〕
  
  

アムトラックは、その先で、警察によって強制的に停車させられる〔盗まれたオートバイがこの列車の出たプラットホームから発見されたためだが、警察のオートバイを盗んで運転しただけの2人を逮捕するため、わざわざ長距離列車を停車させるという “他の乗客に多大な迷惑がかかる” 行動を取るものだろうか?〕。元マーシャルと元チャーリーは捕まり、シカゴ警察に連行される。しかし、手錠をかけられたのは、オートバイの後ろに座っていた元チャーリーだけで、11歳の元マーシャルは、運転していたのにお咎めなし(1枚目の写真)。元チャーリーは、「パパ、僕たちどうなっちゃうんだろう? もしホントのこと言ったら、一生 拘束衣を着せられたままだ」と心配する。元マーシャルは、「大丈夫。叱責で終わる。最優秀の弁護士がいるから。お前の弁護方針は、『経営幹部の燃え尽き症候群』だ」と元チャーリーを宥める。その時、元チャーリーは自分の義父が現れ、思わず、「クリフ!」と叫ぶ。クリフは、一流の弁護士だった。クリフは、元チャーリーに、「君は、幸運だったな、警察が電話してきた時に 私が家にいて」と言い、元マーシャルには、「いいか、ママは、この件は何も知らないからな」と寛大なところを見せる。「ママには、君を学校まで迎えに行って、そのまま映画を観に行くと言っておいた」(2枚目の写真)。元チャーリーが、元マーシャルよりも先に 「ありがとう、クリフ」と言ったので、クリフに変な顔で見られる。「ああ、これ以上 ママを悲しませたくないからな」。そして、元チャーリーには、「マーシャル、どう言ったらいいかよく分からんが、これまで子供とのあまり会う機会がなかったようだが、今日1日で過剰補償されたようだな」と言い、今度は、元マーシャルが、元チャーリーよりも先に 「ありがとう、クリフ」と言い、クリフに変な顔で見られる。「ところで、君は自筆の誓約書だけで自由になれる。私は警部と親しいからな」。今度は、2人が同時に、「どうもありがとう、クリフ」と言う。クリフは、元マーシャルの肩に手を置き、「家に帰ろうか」と部屋を出ていく。元チャーリーには、髑髏を指して、「持って行けよ」と注意する。忘れるところだった元チャーリーは、嬉しそうに振り返る(3枚目の写真)。
  
  
  

その夜、サムが元チャーリーのいるマンションを訪れる。「何があったの? どこに行ってたの?」。「いろいろすることがあって。僕が出てってから、会議はどうなった?」。「30秒くらい、緊張が続いたわ。最後に社長が、こう言ったの。『もし、“くそったれ” どもに異存がないなら、こいつはマーシャルに任せておこう』」(1枚目の写真)。「じゃあ、まだクビになってないんだ」。元チャーリーは、「よかった、サム」と言って抱きしめる。「お祝いしましょ」。「違う! 君に頼みがあるんだ。チャーリーのところに連れて欲しい。クリスマス・プレゼントがある」。「あなたとチャーリー、すごく親しくなったのね?」。「お互い必要なんだ」(2枚目の写真)。元チャーリーは、自分の家までサムの車で送ってもらう。運転しながら、サムが、「マーシャル、クリスマスで実家に帰るんだけど、一緒に来ない?」と誘う。「マンションに1人だけって、チャーリーもいないから、すごく寂しいでしょ」。「ホントに寂しい。そのこと、ずっと考えてたんだ。こんな男が、この年になって1人でいるのは間違ってると」。「素敵。じゃあ、1日早く出ましょ」。「そのことじゃないんだ。クリスマスじゃなくて、これからずっとの話だよ」。そして、マーシャルのために、「結婚してくれる?」とプロポーズする(3枚目の写真)。
  
  
  

サムがどう答えたのかは、分からない。車はチャーリーの家の前に着く。元チャーリーは、車から降りると、髑髏の入った袋を持ち、飛び出た玄関部分の脇を登って1階の屋根に上がり、そこからチャーリーの部屋に歩いて行く(1枚目の写真、矢印は袋)。窓から部屋に入った。元チャーリーは、「ラマ僧から聞いたんだ。願うと同時に、髑髏に触れるんだって。それ脱いで、僕のパジャマがビリビリになる」と父に言う。2人はパンツ1枚になり、髑髏を挟んで向かい合って床に座る。そして、髑髏の上に両手を置き(2枚目の写真)、目を閉じて祈る。すると、三度目の白い光が放たれる(3枚目の写真)。
  
  
  

光が消えると、2人は元に戻っている。マーシャルが、「うまくいった」と安堵し、チャーリーが、「パパ、良かったね」と笑顔で答える(1枚目の写真)。お互い、服を着た後、マーシャルは、「それ、どうしよう」と、髑髏の行く末をチャーリーに相談する。「タイに戻った時、持ち主を捜して。社長さんは、パパに、ゴーサイン出したよ。新年になって戻ったら、サムと一緒に続けて欲しいって」。「凄いな」。2人は抱き合う。マーシャルは、髑髏の入った袋を持って、窓から出て車に戻る。マーシャルが車に乗った後、父が何を言うか聞こうと、チャーリーは頭にマイクロ無線送信機を付ける。マーシャルが最初にサムにかけた言葉は、「会えて嬉しいよ〔It's good to see you〕、サム」。サムによっては、変に聞こえたかもしれないが、そのことは口に出さず、「チャーリーに話した?」と訊く。「話すって、何を?」。「私が『イエス』って答えたこと」〔ここで ようやく、マーシャルのプロポーズに対するサムの答えが分かる〕。「イエスって、何が?」。「忘れちゃダメでしょ。たった20分前よ。プロポーズしたじゃない」(2枚目の写真、パパに対するプレゼントが聞けて嬉しそうなチャーリー)。「君は、イエスって言った」(3枚目の写真)「もちろん、話したさ。僕と同じくらい興奮したよ」。車の助手席の前に、ペン型の小型マイクロフォンが置いてあるのに気付いたマーシャルは、チャーリーが今の話を聞いていると悟り、嬉しそうに〔感謝を込めて〕部屋を見上げる。
  
  
  

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